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白花曼珠沙華【刀剣乱舞】

第1章 朝焼けの声


「僕はね、てっきり君が嫌がるかと思ったんだ。」

場所を変えた私達は、私の部屋へ来ていた。

あまり大きな声で話せる内容ではないので、お互いに聞こえる程度の大きさで話す。
兼定に聞かれでもしたら面倒だ。
彼は極端に人間を、審神者を嫌う傾向にある。

「嫌がる?なぜ、私が嫌がると?」
「うーん、何て言うかさ、ここの空気を乱すから。そういうことは、どうしてもね。……皆、絶対に口にしないでしょ、主って。」
「えぇ、そうですね……私もその言葉を聞いたのは随分と久しいですから。」

そう、ここの刀剣達からその言葉を聞いたことが果たしてあっただろうか、という程に皆その言葉を使おうとしないのだ。
故意的に、なのか。それともここの暗黙の了解となってしまっているのか。

ふと、目の前の相手を見れば些か驚いた様にも笑っていた。

「それは僕の方だよ。もしかして気が付いてない?君がさっき、三日月といる時にぬしさまって言ってたのを聞いちゃってさ。三日月は何も気にしてなさそうだったけどね。…驚いたんだ、僕。」

はて、そうだったか。

無意識に口にしていたとすれば笑ってしまう。
三日月はここに来て一番長く共にいる上、さほど主を嫌っている様子もないので、気が抜けていたのだろうか。

「だから、僕が主へ食事を用意してることも話してみていいかなって思ったんだ。…まぁ、たったそれだけの事なんだけどね。無駄に神経使うんだよ、こういう話題は、ここでは。」

やれやれ、と言った風に肩を竦めて見せる姿に今までと違う空気を感じた。
それは感じたことの無かった空気だった。

「……御主は、審神者が嫌いでは無いのですかな?」
「まぁ、前の主は嫌いだよ。思い出したくもない位にはね。でも、だからと言って全ての人間を嫌うのはまた別の話でしょ?」

彼の言うことは最もだった。
疑うこと無く、受け入れるしかなかったこの現状に疑問を抱くのは私だけではないと、思っても良いのだろうか。

「確か、小狐丸は今の主がここに来てから顕現されたんだったよね。」
「えぇ、ですが……その時の事を何ひとつ覚えては居ないのです。」

燭台切は少し考えむ様子を見せた後、真剣な表情で私を見た。

「君が来たときは少し騒ぎになったんだよ。」
「…騒ぎ、ですか?」
「うん。そうなんだよ……少し長くなるけど、折角だから君が此処に来る前の話からしようか。」
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