第13章 DAY6 最後の赤き晩餐
最後のデザートまでしっかり平らげた頃には、外はすっかり暗くなっていた。
「ちょっと遅くなっちゃったかな…そろそろ準備しなきゃね」
レイアが立ちあがろうとすると
「待って」
ヨナがレイアの手首をつかんだ。
「えっ……」
立ち上がろうとするレイアは引っ張られてソファによろけるように沈む。
そのままヨナはレイアの身体をぎゅっと抱きしめた。
ヨナの体温が、服越しに伝わってくる。
ヨナの思いも、伝わってくるような気がする。
「……ヨナ…」
ヨナの首筋からは、いつもまとっている甘い香りがする。
「支度…しないと……」
「ちょっと黙ってなよ…」
掠れたヨナの声が耳元で囁かれる。
「………ヨナ…」
レイアは、ゆっくりとヨナの背中に手を回す。
「……っ」
ヨナの、息を飲む音が聞こえる。
「………ヨナ、いつ…来てくれるの」
「……そっ…それは……」
しばしの沈黙ののち、ヨナは答える。
「……4日後。赤は階級順になっているから」
「………そう…」
レイアは少し遠い再会の日に、肩を僅かに落とした。
「ねぇレイア」
ヨナは身体を離し、レイアの顔を覗きこむ。
「約束して」
「何?」
「……耐えられないくらい辛いことがあったら…逃げて」
「ヨナ…」
それは赤のクイーンとしては決して言ってはいけない言葉だった。
だからこそレイアは信じられた。
それが『赤のクイーン』ではなく、『ヨナ・クレメンス』の言葉である、ということを。
「どんなことになっても俺は必ず君の味方をすると、約束するよ」
燃えるように輝く琥珀色の瞳。
まっすぐレイアを射抜くような視線。
レイアは黙って、その瞳に頷いて答えた。