第13章 DAY6 最後の赤き晩餐
黒の兵舎。
朝食を食べるために幹部たちが集まる。
「ふぁー…おはよー…」
フェンリルが伸びをして大きなあくびをしながら入ってくる。
「フェンリル、おはよう」
ルカが朝食の支度をする傍らで、シリウスは涼しい顔で挨拶してくる。
「お、朝帰りじゃねーな!」
「当たり前だろう。誰かと一緒にするな」
「ちょっとそれってアタシへの当てつけ?」
セスは地獄耳も兼ね備えているのか、ちょうどよいタイミングでやってくる。
「…シリウスに…朝までは無理」
「おい、ルカ言ったな…」
ルカを捕まえようとしたシリウスの手があと一歩のところで捕まえ損ねる。
「あ、ルカ…今日の晩飯はお嬢ちゃんは済ませてから来るって。ルカに伝えてくれって言ってたぞ」
「……了解」
「ちょっとー!それはそうと聞きたいことがあるんだけどっ!」
セスが容赦なく切り込んでくる。
「おーそうだなー。俺も聞きたいぜ。ルカもだろ?」
「………」
ルカは黙っているがほぼ同意した顔をしている。
「……あぁ、あれか。『今晩指名されたのは誰か』って話?」
「当たり前でしょー?分かってるならじらさないでよぉ!」
騒ぎだすセスを尻目にシリウスはにやりと口角を上げて告げた。
「………まだ言えないな。『指名された張本人』が来てねぇ」
「えええーーーーー!!!」
セスとフェンリルの叫びがこだまする。
ルカは寂しげに目を伏せる。
「お前ら残念がりすぎだろ…いいじゃねえか、明日からしばらく一緒なんだから」
余裕の笑みで言うシリウスに、ルカがぼそりと突っ込む。
「…シリウスだって、残念なくせに」
「…うっ……ルカ、言うな」
4人がわぁわぁ騒いでいるさなか、後ろから『張本人』の声がした。
「……お前ら、朝からうるせー」
ほぼ同時にレイに向けられた、冷たい視線。
「……………何?」
「……ま、仕方ないわよね…これで全員平等ってことよね」
「相棒のためなら俺は引くぜ…」
「…何なんだよ」
状況の飲めないレイは、怪訝そうな顔で立ち尽くしていた。