第5章 DAY2 黒の兵舎
翌朝。
フェンリルがいつもより少し寝坊して食堂に現れる。
「おはよー……」
幹部一同は登場したフェンリルに一斉に注目する。
「な、な、なんだよ……」
「……もーぉなんなのそのちょっとすがすがしいようなけだるそうな顔はっ!!」
第一声はセスだった。
「あ?なんだよ…すがすがしいとけだるいは対局じゃねーかよ」
フェンリルはうっとうしそうな顔をしてセスの隣に座る。
「あ、ルカ…昨日の晩飯ありがとな。レイアも喜んでたぜ」
ルカは少しだけ頬を染めて俯きながら
「………よかった」
と小さく呟いて紅茶を飲んだ。
「やーん!!もうアリスちゃんを呼び捨てなの?!そういう関係になったの?!」
「うるせーな隣で朝から…」
「だから私がトップバッターの方が良かったって言ったのよぉー…こんな知らない世界でいきなりこんな目に遭って…かわいそうっアリスちゃん!!」
「……とりあえず、セスが一番じゃなくて正解だったな」
冷静に突っ込むのはシリウスだ。
「シリウス…食べる?」
ルカは静かにデザートを提供する。
「ああ、ありがとな、ルカ…ところで、今夜はルカの番だったな?」
他のメンバーにデザートを配るルカの手が止まる。
「………俺、やっぱ行きたくない」
「はぁ?ルカ、それってどういう意味?どうしたの?」
「…やっぱり……こういうのは、好きじゃない」
再び動き出したルカは、レイにデザートを出す。
「ルカ、俺と順番…変わるか?」
レイの言葉に、ルカは首を振る。
「…そもそも行きたくない」
「俺もあまり気が乗らないが、穴を開けると『開戦』しちまう」
レイは至極冷静な声でそう言い放つ。
ルカは一瞬目を見開くと、諦めたようにうなだれて俯いた。
「…そう、だよね」
「そんな顔をするな、ルカ。お前だって女が嫌いなわけじゃないだろう」
「……」
シリウスの言葉にルカは答えない。
「あらーぁルカ、もしかして『そっち』の趣味アリ??それならセスお姉さんがいろいろ手ほどきしてあげ…」
「いい」
セスが言い終わらないうちにルカは語気を強めて拒否する。
「つーかさ、ルカ」
フェンリルはあっという間に朝食を食べ終えて他のメンバーに追い付き、ルカに尋ねる。
「……別にお前、童貞とかじゃねーだろ?」