第36章 After few months【再会】
After 1 month
11月も半ばを過ぎた頃
少し肌寒い夕暮れ時のガーデンには、一際着飾った高貴な人たちが集まっている。
その中心にいるのは
白い肌に琥珀色の瞳をたたえた、ビスクドールのような顔立ちのヨナだ。
本当に人形のような表情のない顔で、周りの人間に挨拶をしている。
「ヨナ、お誕生日おめでとう」
ヨナと同じ髪の色をした貴婦人の言葉に、ヨナは深々と頭を下げる。
「ありがとうございます、母様」
「少しはランスロット様の右腕として役には立っているのか」
隣に立つ紳士はルカと同じ深い紫の髪をしている。
「もちろんです、父様……」
「そうか…。ところでヨナ」
ヨナの父は人混みの方へ視線を泳がせると、少し離れたところにいた人物に手を上げて合図した。
ヨナの父と同じ歳くらいの男性と、美しく着飾った女性がやってくる。
女性はレイアより少し歳下だろうか。
わずかにあどけなさの残る顔に似合わない化粧が施されている。
「ヨナ、こちらはキングスレー家の分家に当たるキャベンディッシュ家のご息女、フランシスさんだ。昨年女学校を卒業して……」
レイアよりも僅かに明るい金髪が綺麗に巻かれている。
オリーブ色の瞳は伏せられ、顔はかすかに赤く染まっている。
……父様がこんな風に「花嫁候補」を連れてくるのは初めてではない。
クイーンの座についてから毎年のように、どこかの貴族の娘を連れてくる。
クイーンの妻の座を得たい者、単に外見に惚れてやって来た者…いろんな女性がいた。
従順そうな子だった時はしばらく相手をしてあげたこともあった。
………でも今は、何をする気にもならない。
会いたい人は、一人しかいない。
そして、ここにはいない。
空には、数日前に満月を迎えた月が僅かに欠け始めている。
「……ヨナ様?」