第34章 last 4d night【フェンリル】※R-18
フェンリルの言葉が
優しく包み込むように響いた。
「本当は……誰かを一途に愛して、そいつに愛されて……そういう方がフツーで、傷付かなかったかもな。でも……」
後ろから絡むフェンリルの腕にきゅっと力がこもる。
「お前にこんなめんどくせー思いさせちまったのは……元を辿ればこの『月小屋の宴』のせいだって…俺は思ってる」
「フェンリル……」
レイアは身じろいで、後ろから抱きしめていたフェンリルに向き合った。
フェンリルはレイアの目尻に溜まる涙の雫を拭って微笑みかけた。
「だから……お前は何一つ悪くねーよ。気にしないで、堂々としてろ」
「うん………」
笑みを取り戻したレイアの髪を指でそっと梳きながら、フェンリルは満足そうに頷き返した。
「フェンリル…」
「ん?…どした?」
「あの……月小屋の……最初が…フェンリルで良かったよ」
「………っ」
髪を梳くフェンリルの手が止まり、目が見開かれる。
次の瞬間、フェンリルは視線を逸らし、手を離した。
「…あー……そうか?まぁ………お前がそう思うなら…良かったな……うん」
フェンリルは視線を逸したまま、ベッドから立ち上がると、くるっと踵を返した。
「レイア、あーとりあえずゆっくり休めよ、な。風呂、入りたかったら使えよ?じゃ、俺行くわ…」
「えっ……あ」
そのまま顔を見せずに去ろうとするフェンリルを、レイアは咄嗟に立ち上がって追いかける。
「フェンリル、待って、あの」
扉を開け、身体が半分廊下に出たフェンリルの服の裾を、レイアが掴んで捉える。
「………ありがとう、フェンリル……。すごく……嬉しかった」
「………っ!」
フェンリルが息を呑む音がする。
「……ごっ、ごめん…引き止めて………それじゃ……」
「……あーーもう!!」
フェンリルは無造作に頭をかくと、くるっと身体を反転させる。
「えっ」
そしてそのまま部屋の中へ戻ると、扉横の壁際に思いきりレイアを追いやり手首を縫い止めた。
「ほんっと……俺の我慢を無駄にしやがって……」
迫るフェンリルの目は僅かに潤んでいるようにも見える。
「えっ……フェンリ…ル?」
「悪い……お前にそんなこと言われたら俺……もう止められねーから」
「………んっ!」