第4章 1st Night 【フェンリル・ゴッドスピード】※R-18
「……なぁ、やっぱ怖い…?」
掠れた声が耳元でする。
レイアの心臓の音がうるさくて仕方ない。
「あ……」
フェンリルの腕は温かく感じる。
その腕の温度はとても優しく、包み込んで守ってくれているようだった。
「俺…レイアのこと最初に見た時から…その」
言い淀みながらフェンリルは続ける。
「……可愛いなって思ってて」
「えっ?」
レイアは思わず後ろを振り向くと
思った以上の近い距離にフェンリルがいて、一気に顔が赤く染まる。
フェンリルも、心なしか頬が染まっている。
「だからどうしても…一番にお前に会いたかった」
髪と同じバイオレットの瞳が
まっすぐレイアを見つめる。
「お前が…嫌だって思うことは極力しねぇから」
「フェン、リル…」
フェンリルはふっと柔らかい笑みを落とし
レイアの髪をそっと撫で、頬に手を添えた。
そしてゆっくりと唇を寄せる。
「………ん…」
レイアは後ろ手に流し台のふちに手を突き
フェンリルからのキスを受け入れていた。
フェンリルのキスは優しくて甘い。
何度も角度を変え、ついばむように唇が寄せられる。
舌は侵入してこないのに、潤んでいくお互いの唇が
触れて離れるたびに、微かな水音を立てて
レイアの身体の中に甘いしびれを落としていく。
「……んん…っ」
フェンリルの指がレイアの髪にさしいれられ
頭の後ろをかき抱く。
もう片方の手が背中にまわされ
ぐっと身体を引き寄せられる。
僅かに絡まる舌。
レイアはもどかしさを覚える。
(フェンリル……)
昨夜ほどの怖さはない。
それは相手がフェンリルだからなのか
それ以上のことは分からなかった。
やがて唇が離れ
フェンリルが艶っぽい瞳で覗きこんでくる。
「……怖い、か?」
レイアは少し躊躇いながら小さく首を横に振った。
フェンリルは安堵の笑みを浮かべた。
「…良かった」
そして、熱っぽい瞳を向けるレイアの視線を捉えると
「ぜってー後悔させねえから」
と笑いを一つ落として
再び唇を重ねた。