第32章 last 4d【黒への招待】
「えっ………?」
ルカの表情が固まる。
「酒、入れ忘れたのかよ」
「ううん、入れた……ちょうど無くなって空き瓶を捨てたから覚えてる」
「じゃあこれは…?」
フェンリルが首を傾げるのと同時にルカの表情が青ざめる。
「……ヤバい」
その言葉と同時にキッチンから大きな物音がした。
ルカの嫌な予感は見事的中し、オレンジジュースとカクテルの入れ替わったグラスを一気飲みしたシリウスがキッチンで倒れていた。
倒れたシリウスをフェンリルとレイで何とか談話室のソファまで運んだ。
その後パーティはレイの睡魔の訪れと共にお開きになり、ルカ、フェンリル、酔いが少し冷めたレイアで後片付けを済ませたのだった。
「あなたのために開いたパーティだったのに、手伝わせてごめん…」
キッチンを出てルカが申し訳なさそうに謝る。
「い、いいの!大丈夫だよ?…こうしてみんなと過ごせて楽しかったから」
「今日は遅いから泊まっていけよ?ちゃんと赤のキングに話つけてるらしいから…レイアの部屋、ちゃんと用意してあっからよ!」
フェンリルがレイアの背中を叩いてそう告げた。
「えっそうなの?」
表情を明るくするレイアに二人は微笑む。
「ゆっくり休んで。……それじゃ」
「うん…おやすみなさい!」
ルカとフェンリルはそのまま自室の方へと向かっていった。
レイアは以前使わせてもらっていた部屋が2階にあることを思い出し階段の方へ向かおうとすると、談話室の扉が微かに開いていることに気づいた。
(そういえば……シリウスさんそのままなのかな…)
ソファに寝たままで風邪を引いたりしたら大変だ。
苦手なお酒を飲んで具合が悪くなったりしていたら。
そんな思いがよぎり、レイアは音を立てないように談話室の扉をそっと開けた。
中は明かりが消され、窓からの月明かりだけが部屋に差し込んでいる。
満月間近のため明るいが、シリウスが寝ているであろうソファは影になっていてよく見えない。
「……シリウスさん…?」
小声で名前を呼びながら、レイアはゆっくり中へ足を踏み入れる。
暗闇に目が慣れてきて、横たわる人影が見える。
「シリウスさん…大丈夫で……」
掛けられた毛布に手を伸ばしたその瞬間。
「……っ?!」