第31章 few days later【ロキ・ジェネッタ】※R-18
涙の池のほとりで汗を拭い身支度を整えたレイアに、ロキは満面の笑みで釣れた魚を差し出した。
「はいっ!これ、やっと釣れたよ」
「あ、うん…ありがとう」
種類はわからないがかなり大きめの魚が2匹、網の中に入っている。
(きっとルカやシリウスさんがうまくさばいてくれるよね)
「今日は赤の兵舎に帰るんだよね?」
「え?うん…黒の兵舎に行くのは明日だからね」
「じゃあ、赤の橋まで送るよ。俺に掴まって?」
「?」
ロキはレイアに手を差し伸べる。
僅かに首を傾げたレイアはロキの手を取り、見上げる。
「ロキ、あの……」
ロキのオッドアイが深紅の輝きを放つ。
「……ありがとう、アリス。必ずまた…会おうね」
ふっと細められた深紅の瞳は柔らかい光を放った。
「………ロキ……?」
二人の身体は光に包まれ
涙の池のほとりから姿を消した。
レイアが次に目を開けた時には
ロキの姿は無かった。
辺りはすっかり日が暮れて、淡いオレンジが微かに西の空に残るのみだった。
「君って人を心配させる天才なの?」
聞き慣れた声が背後からする。
「……ただいま!」
レイアは呆れ顔で佇む愛しい人の腕の中に飛び込んだ。
「わ……ちょっと何なのこれ…生臭い!離れて!」
「魚だもん、仕方ないでしょ?」
「君ってどういうセンスしてるの……早く兵舎に戻って厨房で保管してもらいなよ?」
笑いながら歩く二人の姿が
夕闇染まる橋の先へ消えていった。