第30章 13th morning 2nd【収束】
「クレイドルの動力源がなくなるのは些か困る」
ランスロットは無表情のまま呟いた。
「……同感」
レイも短く答える。
「約束しよう…アリス。お前の望むままに、両軍は休戦とする」
ランスロットの言葉に、レイアの顔が喜びと安堵の表情でいっぱいになった。
「……ありがとうございます!!」
「ではレイア?一応儀式は儀式だからね…指名をしてくれるかな?」
ブランに促され、レイアは再び幹部たちを見渡す。
レイアの小さな口元が
彼の名を呼んだ。
「………ヨナ」
その名前が口にされた瞬間に
ヨナは目を見開き顔を染める。
「ヨナを、指名します」
がたんっ。
立ち上がるヨナの椅子が後ろに倒れる。
「……君がどうしてもって言うなら…指名に答えてもいいけど…っ」
「……こんな時くらい素直になれバカ兄貴」
ルカの小さな呟きは兄の耳には届いていない。
「赤のクイーン、こちらへ」
ブランの呼びかけに、ヨナが前へ出る。
「次の満月までの間、レイアは赤の兵舎でヨナと共に過ごす。満月の夜に元の世界へ帰るかどうかは……君の自由だよ、レイア」
「はい…」
「……では」
ランスロットが立ち上がる。
「魔法の塔の事態収拾を軍で行うが…カイル、お前はエドガーの治療にあたれ」
「ランス、黒の軍からも応援入れさせてくれ」
シリウスが手を上げる。
「ではゼロ、俺と共に黒の軍と協力して魔法の塔へ向かう」
「はい、ランスロット様」
ゼロが力強く頷く。
「ランスロット様、俺は」
ヨナが一歩前に出た。
「ヨナ…お前に一番大切な任務を頼む」
「はい!」
ランスロットがやんわり微笑む。
「アリスがクレイドルの魔宝石を無効化しないよう見張りながら赤の兵舎へ連れてゆけ」
「………えっ?」
拍子抜けしたヨナの声が響く。
「分かったな……頼むぞ」
そう言い残してランスロットは魔法の塔へ向かう準備をし始めにその場を去った。
幹部たちは皆それぞれ動き出す。
その様子を呆然と立ち尽くしながら見ているヨナを
レイアが呼んだ。
「ヨナ!」
「…………えっ」
「……行こ?」
自然に絡められた二人の手が、温かなぬくもりを感じさせた。