第27章 12th Midnight 拉致 ※R-18
「でね…なんか嫌な予感がするのよ…アリスちゃんを攫って、取り戻して…ってだけでは済まされないような気がするのよね」
セスは呟くようにそう言って続ける。
「ちょっとおかしいと思わない?アリスちゃんを攫って利用したい気持ちは分かるけれど、それだけでは幹部数名が乗り込めば簡単に奪還できちゃうじゃない?」
「なるほど…お嬢ちゃんをさらったこと自体が何かを隠すためのカモフラージュって可能性があるってことか」
「…そう……問題は、何をカモフラージュしているか…よね」
神妙な顔つきで考え込む3人の元に、背後から足音が近づいてきた。
「……俺抜きで作戦会議とか、勘弁しろよな」
「……レイ!!!!」
一同の驚いた顔は、幽霊でも見たかのような顔だった。
「奇跡だ……こんな夜中に起きてるなんて」
「あり得ねー……」
「一体何があったの?!」
「おい、お前ら……俺のこと、見くびりすぎ」
レイの後ろにはルカがついてきていた。
「みんな……一旦落ち着いて考えよう…コーヒー淹れた」
「おールカ、サンキューな!」
少しだけ急ぎ足で、幹部たちは談話室へ向かった。
セスとフェンリルが話を全て共有すると、レイはふっと息を吐いて全員の顔を見据え、指示を出し始めた。
「俺とルカ、セスはガーデンに移動して待機…どんなことがあっても対処できるように頼む、な」
「OK、ボス」
「ルカ、無理だけするな」
「……分かってる」
レイは2人の意思を確認するとシリウスに視線を移す。
「黒の兵舎が狙われる可能性もゼロとはいえない。お前にここを任せてもいいか」
「もちろんだ」
「……ただし事態が変わったら信号弾を打つから、そしたら最小限の兵だけ残してガーデンに来てくれ」
「OK」
「……で、俺は何すればいいんだ?相棒」
フェンリルはわくわくした顔で尋ねる。
「フェンリル…不本意かもしれねーけど…魔法の塔へ行ってくれ」
「どういうことだよ」
「…これはもう黒だの赤だの言ってられない」
レイはいたって真剣だ。
「本当の敵は魔法の塔のトップだ…正直、一番重要なミッションなんだけど」
「…重要とあれば…断る理由がねーな」
フェンリルはにやりと笑ってレイにハイタッチをした。