第26章 12th Night【ヨナ・クレメンス】
ヨナとエドガーがその場に残ったのはごく自然な流れだった。
ランスロットは2人を見据える。
「ヨナ、エドガー」
「はい」
2人は同時に答える。
「…アモンは我々に協力し、黒の軍を確実に赤の軍の傘下に入れ、表は俺、裏は自分が掌握するという条件で今回2度の奇襲を行った」
ヨナが目を見開き、複雑な想いに眉根を寄せる。
「しかし実際はやや異なる」
エドガーがぴくりと反応した。
「おそらく奴らは赤の軍をも出しぬき、アリスを手に入れ、『操り人形』たち全員にアリスの能力と魔宝石を分け与え、最強の軍隊を作ろうとしている」
「な………っ!!!」
絶句するヨナの隣で、エドガーはひどく冷静な顔を浮かべていた。
「つまり、アリスをさらって集団で彼女を犯すということでしょうか」
「そんなこと絶対にさせるか!!」
耐えきれずヨナが声を上げた。
ランスロットは目でヨナに落ち着くよう制止する。
「…そのような卑劣な行為、俺は好かん」
吐き捨てるようにランスロットは呟いた。
「よいか。アリスを攫う可能性が高いのは今夜から早朝にかけてだ。月小屋の主人が宣言される前…そして最も警備が手薄になる瞬間だ。わかるな?」
2人は同時に頷いた。
「奴らにはこちらが悟っていることを気付かれるな」
「もちろんです」
エドガーがにこやかに頷く。
「必ず…必ずアリスを…レイアを守ってみせます」
ヨナの言葉は、忠誠を誓った者への思いと愛する者への思い、二つが重なっていた。
こうして
ヨナは予定通りレイアと月小屋で合流し
エドガーは極秘で月小屋周辺を警備
奇襲が遭った場合即合流して応戦ということになった。
ランスロットはじめそれ以外の幹部は
早朝、ガーデンに向かい待機することになった。
彼らの奇襲の可能性は
100%に近い確率にまで上がってきていた。