第25章 DAY12 明日への思い
「おい、ルカ…無理するんじゃないぞ」
キッチンに立つルカ。
その後ろでそう声を掛けたのはシリウスだった。
「…大丈夫、これくらいできる……」
振り返らずにルカは食材を揃えていく。
右腕の包帯がまだ痛々しい。
「ルカ……おい、ルカ!」
シリウスがルカの肩を掴み無理やり覗きこむと、
ルカは眉根を寄せ今にも泣きそうな顔をしていた。
「…なんて顔してやがるんだ」
シリウスは苦笑した。
「……だって……レイアが……」
その言葉にシリウスも険しい表情を浮かべる。
「……わかった、俺が手伝うからお前も無理しないこと。いいか?」
ルカは躊躇いながらも観念したようにうなづいた。
……黒の兵舎に帰還後
レイアはひどい頭痛を訴え寝込んでしまっている。
『アモンの狙いは………案ずるな……ヨナと………必ず守る………満月まで………』
白いもやのかかったビジョン。
途切れ途切れに、ランスロットの声が聞こえる。
「ランスロット…様……」
手を伸ばしても何も触れることはない。
そのうち、めまいのような感覚と共に頭に痛みが走る。
(んん……っ…)
「……レイア、レイア」
「……ぁ…」
呼び声にゆっくりと目を開けると、
そこにはレイがいた。
「……レイ」
目が合うと、レイが柔らかく微笑む。
「大丈夫か?」
「…うん……ごめん、心配掛けて…」
そう言って起きようとするレイアの肩を、レイが掴んで押し戻す。
「まだ寝てろって。顔色、よくないから」
「でも」
「…キング命令、なんだけど?」
いたずらっぽく笑むレイに、レイアも思わずふっと笑ってしまう。
「……わかった」
観念して、ベッドに再び沈みこむ。
「……寝たままでいいから、話してもいい?」
「うん」
「……ランスロットに、魔法かけられたんじゃねーの?」
「……」
思い当たる節があるレイアは、黙って頷いた。
「昨日のこと、思い出せなくて」
「記憶、消されたんだな」
レイはそう呟いて、そっとレイアの頭を撫でた。