第3章 DAY1 赤の兵舎
翌日の朝。
白ウサギ「ブラン」と
通称「アリス」…レイアは
馬車に乗って赤の兵舎前へ到着したところだった。
兵舎前で出迎えていたのは
赤のジャック、エドガーだった。
「おはようアリス…ようこそ赤の兵舎へ」
柔らかな物腰のエドガーは恭しく頭を下げる。
昨晩の出来事と、これからのことを考えるとどんな顔をしたらいいのか分からないレイアは
曖昧な顔を浮かべる。
「……レイアです。お世話に、なります…」
「これはこれは…」
エドガーは少し困った顔をしてレイアの肩に触れる。
少し震えたレイアを見下ろし、エドガーが続ける。
「…ブラン、ずいぶん彼女は怯えているようですが、『イントロダクション』で手荒な事をしたのですか?」
「エドガー、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ…僕はいつでも女性を大切に扱っています」
ブランはにこやかに答える。
「それでは夕刻になりましたら、『月小屋』へ彼女を送り届けてくださいね。よろしくお願いします」
「ええ、分かっていますよ。ご苦労様でした」
ブランは最後にレイアの顔にそっと手を添える。
「レイア…耐えられないほどの辛いことがあったら、いつでも僕を呼んでね。必ず君の力になるよ」
「あ……は、はい…」
顔を赤らめて俯くレイアの頭を撫でると
ブランは馬車に乗って去っていった。
エドガーはふっと笑みを落とす。
「まったく…」
そう呟いてすっとレイアの髪を大きくかきあげる。
「あ…!」
露わになった首筋に視線を落とし、呟くように言う。
「…こんなに痕を残して…よくあんなことが言えますね、あのウサギは」
「……えっと…」
顔を赤くしたまま見上げるレイアに
エドガーは答える。
「俺はエドガー・ブライト。赤の軍のジャック…ここでの生活で何かお困りのことがあれば遠慮なく…俺に言ってね?」
物腰の柔らかいエドガーの瞳は
表情とは裏腹に
冷たい色を宿していた。