第16章 7th Night【ゼロ】※R-18
すでに明りの灯っている月小屋の前で
ゼロは馬から降り、門のそばにつないだ。
ヨナを最終的な主人に選ばせるよう仕向けていたこと。
その上で幹部が全員力を得ること。
…ランスロットの意思を、ゆっくりと思いだす。
(赤の軍、勝利のためとはいえ…)
相手が望んでいないのに「行為」を強いるのは
やはり気乗りしなかった。
(……俺が考えていても仕方ないな)
ゼロは月小屋の玄関に立ち、呼び鈴を鳴らした。
ほどなくして扉が開き
レイアが顔を出した。
「あ…ゼロ」
「…待たせたな」
「ううん、私もさっき来たところなの。入って?」
ゼロが思っていたよりもレイアは明るくあっけらかんとしていた。
「……」
中に通され椅子にかけるよう促される。
「ゼロ…紅茶飲む?」
「ん……ああ」
「ちょうど今淹れてたところなの」
レイアはキッチンから二人分のカップを出し、ポットから紅茶を注いだ。
いい香りがふんわりと漂う。
「……お前は、肝が据わってるな」
「え?」
「俺とそんなに関わりがなかったのに、全く動じてない」
「……」
レイアは柔らかく微笑んで、視線を落とした。
「ゼロは…すごく優しいと思う」
「…?」
「戦いのこととか、そういうのは全然分からないんだけど…でも仲間に対する思いやりはすごく一途だなって…」
ゼロはぽかんとしながらレイアの言葉を聞いていた。
「だから…悪いようにはしないんだろうなって…そんな気がして…あっ…ごめんなんか知った風な口きいて…」
「…あ、いや……」
ゼロは僅かに目を泳がせ、紅茶を一口飲んだ。
「…俺からも、いいか?」
「ん…?」
「…ヨナのこと、どう思ってる?」
「えっ……」
突然ヨナの名前が出されたせいか、レイアは少し顔を赤くして目を見開いた。
「え、えっと……」
「好き、なのか」
「あ、うーんと…その…」
言い淀み目線を泳がせるレイアの、少し染まった頬が
答えを告げているようだった。
「…よく分かった」
「…えっ!」
ゼロはふっと笑った。