第10章 【最終章】 再出発──未来へ。
墓参りを済ませ、港へ向かうと──
「よぉ、“妹”」
赤髪の船長──シャンクスが待っていた。
「待っててくれたんだ?」
「そりゃあ、可愛い妹のお願いだからな」
「よしてよ。それは昔の話でしょう?」
苦笑いするリラ。その様子を見てシャンクスはニッと笑った。
「故郷へ戻るか?」
シャンクスの問いに、リラは首を横に振った。
「しばらく私の島を拠点にして旅をするつもり。『生まれてきても良かったのか』その答えを──私も知りたいから」
雪女としての能力は、戦闘面においてはとても便利だった。
でも人の温もりを知ることはできない。
人を傷つけるだけの能力なんていらない。そう毎日自分を呪い続けていた。でも──
「……この能力は、人を喜ばせることも出来るのかなって……思う、今なら」
そう言うと、シャンクスは嬉しそうに笑った。
「それならいい。──行ってこい」
「ん。頑張るわ」
笑いあい、リラはシャンクスが貸してくれた小舟に乗り込んだ。行き先は──ドレスローザ。
「なんだか……ルフィ君にはまた会いそうな気がする」
船を出しながらくすりと笑うリラ。そしてバングルに目を移す。
大丈夫、エースはここにいる──
エースの遺志は私たちが継いでゆく。
「やっと……1つに繋がったね」
空は快晴。
ふと、エースの声が聞こえた。
『愛してくれてありがとう』
と。リラは軽く目を瞑った。
「こちらこそありがとうだよ……エース」
最愛の人。
愛をくれて──人を愛することの幸せを教えてくれて、ありがとう──
fin.