第9章 地獄の終わり
白ひげが沈黙した。
「……し……死んでやがる……。……立ったまま!!」
黒ひげが驚いたような声を上げた。「……!!……オヤジィ……!!!」と白ひげ海賊団の誰かが泣き出す。
──“白ひげ”死す!
死してなおその体屈することなく──頭部半分を失うも、敵をなぎ倒すその姿はまさに“怪物”。
この戦闘によって受けた刀傷、実に──260と7太刀──
受けた銃弾100と52発──
受けた砲弾──40と6発──さりとて、
──その誇り高き後ろ姿には……あるいはその海賊人生には……
一切の“逃げ傷”なし!!!
“白ひげ海賊団”ロジャーの息子のエース救出失敗、そして船長“白ひげ”の死。末々に語られる、この歴史的大事件をその目に映した者たちは……いまは、ただ、声を呑むだけ。
「モタモタするな!!船に乗れ!!!最期の船長命令を忘れたか!!!」「ジンベエ!!エースの弟を早く!!」「おう!!」
慌ただしく動く白ひげ海賊団。
と、黒ひげが白ひげの亡骸を黒い布に包んだ。そしてその中に自分も入る。
「何する気?」
「見せてやるよ最高のショー」
そしてしばらく2人は出てこない。
「おいそこの海兵!エースの弟と一緒に船へ!」
「分かった!」
誰かに言われ、リラは慌てて走り出した。
だが青雉によって海を凍らされ、出航ができなくなる。
「クザンさん!」
「すまんねリラ……おれも仕事だからよォ」
リラは大きく舌打ちする。自分の力じゃ氷を強くするだけ。
「!!?」
何か、熱いものの気配がした。ジンベエとルフィの前に急いで走る。そこへ──
「わしが『逃がさん』言うたら──もう生きるこたァ諦めんかい馬鹿たれが……」
「……サカズキさん……!」
ジンベエとルフィを背中に庇う。まだ背中は痛むけれど、そんなことを言っている余裕はなかった。
「そのドラゴンの息子こっちへ渡せ……!!」
赤犬は本気でルフィを殺しにかかっている。だからこそ、リラは挑発してみた。
「それは出来ない相談だわね」
ニヤリと笑って言うと、ジンベエもそれに乗ってくれた。
「わしもじゃ。──わしはこの男を命に代えても守ると決めとる」
「同感。と言うわけで諦めてください、“赤犬さん”」
「……!! ──じゃあもう……二度と頼まんわい……!!」