• テキストサイズ

炎の華と氷の心

第6章 最終日、そして運命は非情に廻り始める


スズシロと名乗る女が去った後、エースはずっと考え込んでいた。
あの女のたとえ話──あれがリラのことだとしたら。

頑なに自分の体に触らせなかったリラ。
最後にキスをした時、やけに冷たかった彼女の唇。

もし──もし、彼女が雪女だとしたら。
おれが最初から彼女を雪女だと知っていたら。おれは彼女に惹かれることはなかったのだろうか。

答えは──否だ。
彼女がどんな人間だろうが、リラはリラだ。
おれはアイツ本人に惹かれた。アイツの明るいところも影の部分も、全てひっくるめて好きになった。

ああ……ちゃんとアイツに好きだ、と伝えておけばよかった。そうすればこんな風な心残りはなかったのに。
はあ、と大きくため息をつく。

ちくしょう。

女のことでこんなに悔しい思いをしたのは初めてだ。
リラ──

「会いてェな」

呟いた声は暗い監獄の中に響くことなく消えた……。
/ 75ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp