第6章 最終日、そして運命は非情に廻り始める
スズシロと名乗る女が去った後、エースはずっと考え込んでいた。
あの女のたとえ話──あれがリラのことだとしたら。
頑なに自分の体に触らせなかったリラ。
最後にキスをした時、やけに冷たかった彼女の唇。
もし──もし、彼女が雪女だとしたら。
おれが最初から彼女を雪女だと知っていたら。おれは彼女に惹かれることはなかったのだろうか。
答えは──否だ。
彼女がどんな人間だろうが、リラはリラだ。
おれはアイツ本人に惹かれた。アイツの明るいところも影の部分も、全てひっくるめて好きになった。
ああ……ちゃんとアイツに好きだ、と伝えておけばよかった。そうすればこんな風な心残りはなかったのに。
はあ、と大きくため息をつく。
ちくしょう。
女のことでこんなに悔しい思いをしたのは初めてだ。
リラ──
「会いてェな」
呟いた声は暗い監獄の中に響くことなく消えた……。