第3章 Lv.12
大ピンチだ。
なにがと問われれば答えは私の貞操であり、私に残された僅かな乙女たる部分が最期を迎えようとしているのである。
要するに犯される寸前だ。
彼、オシゴト仲間の光太郎に。
「なにがだめなの?」
「ともかく駄目なの!」
「俺のことタイプじゃないとか?」
「そういう問題じゃなくて!」
「心配すんなって、ゴムすっから」
「違うそうじゃない!」
彼はどうしてこうなのか。
出演者の楽屋兼スタッフルーム。
注文も下火になってきたことだしと、鉄朗さんが休憩を許可してくれたのだ。
光太郎と一緒に「芋、お前も休んでこい」って。でもそれが運の尽き。
私は、光太郎に組み敷かれている。
煙草のやにが染みついたソファの上。貴族が座るような、ベロア生地の。
なにが彼をそこまで掻きたてるのかは知らない。知らないし、きっと聞いたところで理解できそうにもないのだけれど、とにかくその性に対するアグレッシブさときたら。
もう、チャラいなんてもんじゃない。
彼にとって女性を口説くということは、息をするのと同義なんじゃないだろうかとさえ思う。
まさにあれだ。
万年発情期の兎よりも何とやら。
けーじくんの言うとおりである。
「……も、離して、ってば!」
「やーだ、離さない」
「っ、ヤりたいだけなら他当たって!」
「ヤるだけじゃなきゃいいの?」
じゃ、付き合おっか。
俺いまフリーだし。
彼は悪びれた様子ひとつ見せず、けろっと笑みを転がしてみせてそんなことを言った。
だからそういう問題じゃないってば。