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(R18) Lv.5 (HQ)

第2章  Lv.7



 四番テーブルにはパトロンを。
 奥のボックス席にはコスモポリタンを二つで、及川さん目当ての来店らしい女性客にはモエのロゼ。

 眩暈がしそうだった。

 何度もカクテルを零しそうになって、幾つも注文が入るとパニックになりそうになって、そんな目の回るような忙しさのなか。

 視界の端々に入ってくる舞台の華やかさや、ダンサーたちのあまりの美しさに圧倒されて、同時に絶望させられて。

 もう何度目になるのだろうか。
 自分の容姿に対する認識の甘さを、改めて痛感する。

 地元のダンススクールでは一番だった。誰にも負けてないと思っていたし、その自信があった。傲っていた。

 こんなことだから、倒産寸前の事務所にしか受からなかったのだ。

 宣材写真代と登録料だけ取られて、それがほとんど詐欺だということにも気付かずに、浮かれて喜んで。

 これでプロのダンサーになれるんだ、って、本気でそう思ってた。



「馬鹿みたい、私、……本当に」



 世間知らずだ──

 ぼそり、落とす声は弱々しく。
 いまだ続くショーケースの華々しさの陰で、誰に届くこともなく消えていく。

 舞台を輝かせる照明。
 魅せる側と、観る側。

 私はいま、どうしようもなく後者で。
 その事実がどうしようもなく悔しい。

 そして、何より。

 この妬ましくも強烈に憧れる舞台を。
 誰もが見惚れてしまう、この舞台を。


「あ! 鉄朗くんやっと戻ってきた!」

「ワリィ、雪絵が突然具合悪くなっちまってよ。セトリ組み替えんのに時間食われてたんだわ」

「マジで!? や、その話は一旦置いといてとにかくやべーの! ボックス二番からコラーダ人数分入っちゃって、俺もう無理!手伝って!」


 このショーを、彼が構成しているのだということが。鉄朗さんの創った舞台に立てていない、自分が。

 どうしようもなく。



「──……悔しい」



 そう思った。








 つづく

「コラーダかよ……、味は?」
「パインといちご二個ずつ!」

「はァ!? おい芋女! このクソ忙しいのに面倒な注文とってくんなボケ!」

「私のせいです!?」
「責任取って手伝え! 働け芋!」
「理不尽! あとひと言多い!」
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