第3章 事件の日
聞き覚えのある、とても安心するちょっと低い声。
引き留める為に握られた腕は、先程の気持ち悪い男の手とはまるで違う。
あの時と同じ、じわりと広がる暖かさ。
捕まれた腕を辿って視線を上げれば、そこには険しい表情をしたリヴァイがいた。
リヴァイは漸く顔を上げたアイリーンの顔を見ると、より険しい表情になる。
「……来い。」
リヴァイは一言そう言うと、掴んでいた腕を解放し、代わりにアイリーンの手を握った。
言葉や引っ張ろうとする行動は強引なのに、繋がれた手はとても優しかった。
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「こっちを向け。顔を拭く。」
「え、いや、私自分で」
「口は閉じてろ。」
片手に濡れたタオルを持って、ソファに方膝を立てて同じソファに座るアイリーンにしかめっ面を向けている。
リヴァイは有無を言わさない態度で、アイリーンの顎に手を近づける。
顔にリヴァイの手が触れた瞬間、アイリーンはビクッと肩を上げた。
その動きに伸ばした手を一瞬止めたリヴァイだが、直ぐにガシッと顎を掴む。
「い、痛い! 痛いですリヴァイさん!」
「口は閉じてろと言った筈だが。」
「顎! 顎の掴み方が雑すぎて……って目が潰れる!」
思いの外強く捕まれた顎が痛くて悲鳴を上げれば、濡らしてあるタオルで目元を強く擦りはじめる。
押し潰されそうになり、また悲鳴をあげるアイリーン。
だが、リヴァイはそんなこと気にもしていないようで、平然とした顔で目元から頬、顎へとタオルを移動させて拭いていく。
「痛っ……、染みる……」
「我慢しろ。こんなに擦ったお前が悪い。」
口許へと移動してきたタオルで、擦りすぎて傷となった箇所が染みて痛みを訴える。
だが、リヴァイの言った通り、自分のせいで怪我したようなもの。
拭いてもらっている間、アイリーンは目を瞑って痛みに耐えた。