第3章 事件の日
「…………よ。………で、………いや。………。」
声が少し聞き取れる程までにアイリーンは廊下を進んでいた。
どうやら複数いるようだ。
しかも男性の声。
資料室の方向。
男性の声。
複数いるらしい。
この三点からいくと、恐らく昼間の兵士達だろう。
そういえば夜に集まると話していたっけな。
怖い気持ちがすぅっと胸から消えていく。
アイリーンはホッと胸を撫で下ろした。
だが問題はここからだ。
昼間の兵士なら、もう確認などせずに自室へと戻りたい。
酔っぱらいが相手なら、関わりたくもない。
だが、本当に侵入者の場合がある。
その場合は見逃せない。
直ぐにでも帰りたいのが本音なのだが、アイリーンはしょうがない。と呟いて歩みを進めた。
このまま帰って昨日のは侵入者でした。なんて事になったら夢見が悪くなりそう。
確認だけして帰ってしまおうか。
今すぐ帰りたいと叫ぶ心の声に、確認だけだから。と言い聞かせて資料室に近づいた。
近づいて核心した。
やはり資料室だ。
資料室の中から笑い声が聞こえ、灯りが見える。
笑い声……ということは、侵入者ではないな。
侵入しておいて笑うということは有り得ないだろう。
よし、帰ろう!
お風呂の時間がなくなる!
ホッと胸を撫で下ろし、アイリーンはくるりと踵を返した。
また暗い廊下がアイリーンの前に伸びている。
よくこんな所通ったな……。と自分に感心しながら、アイリーンは手をぎゅっと握った。
「あれ?女がいるぞー。」
ガチャ。と後ろで扉の開く音。
それとほぼ同時にお酒の匂いと酔った男性の声が聞こえてきた。
アイリーンの頭に過った言葉は
“逃げろ”
その一言だった。