第1章 二人が共に居れたなら
「っ──!」
息を呑む。眼前の光景があまりに現実味を帯びず白昼夢でないかと思ってしまう。
「夢じゃない。夢になんてさせないさ」
だから、彼は何故に私の思考を読み取るのか。そんなに顔に出てる?
未だ離されはしない爪先に感じる柔い感触と、繋がれた掌に伝わる温度が私の頭を、思考回路を、判断を鈍らせる。吸い込まれてしまいそうな程透き通った蒼に魅入られたように私の視線は彼の眼睛に固定された。
何か、何か答えなければ。
緊張と焦燥と忸怩で埋め尽くされた私の思考は全く持って役に立たない。何と答えて良いんだろう。彼の想いに、答えても良いのだろうか。
「応えて、ムメイ。君も僕のことを好いているのなら、好きだと」
迷いに揺れる私へ、彼の慈しみを帯びた声音が落ちる。嗚呼、私の好きな声だ。安心するような、体の力が抜けていくような、そんな声。間近に射抜く彼の瞳に囚われる。偽りの言葉など許さないとでも言うように純粋に透いた眼睛だ。
「わ……たしも」