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御伽噺じゃ終われない【リゼロ】

第1章 二人が共に居れたなら


 羨ましい。
 羨ましい、と。彼を後ろへ従わせる彼女を見て正直、その言葉しか浮かばなかった。


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 王選。私の住む王国の王を決める為の手法らしいが、今はそれが憎たらしくてしょうがなかった。一介の市民でしかない私と、王選候補者の騎士である彼との距離を如実に表している。否、元から私達に近しい距離はない。使いで近道をしようと裏路地を通った時、柄の悪い連中に運悪く捕まってしまった時、金は仕方ないかと諦めた瞬間運良く助けてくれたのがラインハルトさんだった。それからというものの、私は彼の姿を見つける度追い掛け何かと理由を付けては言葉を交わしている。公務中は流石に長話はしない。今日もお疲れ様です、頑張ってくださいなんて簡単な言葉を二言三言投げ掛けるだけだ。運良く非番の彼を見つけた時はそればかりではないが。
 ラインハルトさんはとてもお優しい方だ。
 柄の悪い連中に絡まれている女の子を助けた数なんて枚挙に暇がないのは知っている。私もその内の一人でしかないことも理解している。数多くの女の子からアプローチを受けていることを彼へ付きまとう中で知り、かく言う私もその数多い女の子の内一人でしかないことを知った。
 けど、彼がとても優しい人だから。
 迷惑そうな顔を一瞬でもしてくれたら。私と言葉を交わす中で忙しいと、時間を気にする仕草を少しでも見せてくれたら。そんな様子を一度たりとも見せてくれたことがないから私は彼の優しさに思いやりに付け入ってしまうのだ。
 けれど、王選候補者の騎士になったとなるとこれまでのように気軽に話し掛けに行くのは流石に厳しいか。元から手の届かない存在だったが、本格的に雲の上の人になってしまった。
 嗚呼、ラインハルトさん。貴方の麗しい微笑が私の活力でした。こんな何も取り柄もない町娘に親しくしていただき今までありがとうございました。もし許されるなら貴方のその端正なかんばせをもう少し堪能していたかった……。
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