第1章 始まり
「あなた!サクヤさん!」
ミコトはバンと扉を開けた。
玄関には、ちょうど帰ろうとしたところだったのか、父のサクヤと、フガクが立っていた。
「どうした、落ち着きがないぞ。…ん?もしかして、ソラか?」
フガクとサクヤは、目を見開いた。
泥だらけのソラを抱き、いつもは冷静なミコトがここまで焦りを見せている。
「まさか、ハルに何かあったか…。」
フガクがミコトに尋ねると、ミコトは目を伏せた。
そのミコトの様子に、真っ青になった顔をしたサクヤが、もう一度尋ねた。
「ミコト。ハルは…どこだ。」
その場にいる大人全員が、最悪のシナリオを思い描く。
ミコトとソラの様子から、それは正しいのだろうとわかる。
それでも、聞かずにはいられなかった。