第37章 音の誘い
ソラは一呼吸置く。
今なら、名前を伝えられるだろうか。
今なら、"ソラ"だと言っても、分かってくれるだろうか。
…今言えば、先ほどの"好き"は、取り消しなのだろうか。
そう思うと、怖い。
" ソラ"だと言うと、突然彼が離れていくかもしれない。
でも、いつかは言わなければならない。
サスケと共に在りたいのならば。
ソラは、覚悟を決めた。
『サスケ、あのね。私本当は…。』
その時。
サスケはソラの体を抱き寄せた。
『…えっ?な、なに?』
「黙ってろ。」
サスケのぬくもりに、安心する。
そのぬくもりに、決意なんて簡単に揺らぐ。
いつも記憶が蘇りかける度に、同じようにしてもらっていたけれど、それとは違う。
ソラも、サスケの身体に腕を回した。
(私は、サスケといれば、何があっても幸せだ。)
そう、思った。
暫くそうしてから
サスケとソラは、唇を合わせた。
沢山の、好きを詰めて。
…名前を言わなければならない。
今日、言わなきゃ。
明日は来ないかもしれない。
…けど、今日は。今日だけは。
彼が好きな"リク"でいよう。
明日になれば、真実を伝えよう。
私がソラなんだと。