第37章 音の誘い
ナルト達が帰ってから、ソラは一人、ベッドに潜っていた。
(なんで…。嫌な予感がする。怖くて震えが止まらない…!)
大切な人を失う恐怖。
もう、何度も体験した。
両親の時、イタチの時、波の国、死の森。
そして、今。
『…嫌だ。助けてサスケ…っ!』
「呼んだか?」
怖くて怖くて思わず呼んだ彼は、来てくれた。
"サスケが居なくなるかもしれない"
そんな思いがあったからか、来てくれた事にとても安心した。
『サスケ…。』
彼の名を呼ぶと、彼は首を傾げて微笑む。
…今、言わなくちゃ。
今、名前を言わなきゃいけない。
明日は、来ないかもしれない。
イタチによる、うちはの事件の時のように。
『あのね、サスケ…。実は私…。』
「リク、俺は…。」
同時に話し出して、固まる。
「俺から先に言ってもいいか?」
『う、うん、サスケからどうぞ。』
名前を言う緊張から、もう少しだけ離れられる。
正直、助かったと思った。
「リク。俺は…。」
もう一度、話し出すサスケだが、言葉にする事が難しいのか、黙り込む。
きっと、それ程大切な事なのだろう。
『…待つよ。』
そう言うと、サスケはギュッと拳を握り、しっかりと視線を合わせてきた。
「俺、リクが好きだ。」
『………え。』
あまりにも突然で、一瞬、何を言っているのかと思う。
そして、サスケの言葉を、脳内でもう一度再生する。
" リクの事が好きだ "
理解して、受け止める。
待ち望んでいた言葉。
この言葉をもらうために、努力してきた。
やっと、貰えた。
…だけど少し複雑で。
彼が好きなのは、"リク"であって、"ソラ"じゃない。
確かに同一人物だけれども。
今の、私じゃない。
でも、それでも。
私の想いを伝えても、いいよね?
『…私もサスケが好き。特別な…、好きだよ。』
「…ありがとう。」
サスケがはにかむように笑う。
いつもの大人びた空気とは違う、少し子供らしさを含んだ笑顔。
…きっとこの世で、サスケのこんな顔を見た事があるのは私だけ。