第36章 私は
( そういえば、俺が暗部にいた頃、うちはの少女の事件の担当したな。)
屋根の上に腰かけ、イチャイチャパラダイス下巻を読みながら、カカシは思う。
確か他国の忍がイタチに逆恨みしてこの国に侵入し、道で出会ったうちはの少年少女を手をかけようとした、なんて話だったか。
後から話を聞くと、2人してイタチの志を守ろうと相手にひるむ事なく喧嘩を売った…などと周りの大人は言っていたが、その小さな2人のうちはほど無謀にしろ勇敢な奴はいなかったのかと情けなく思ったっけな。
口先だけじゃねえかと、まだ幼いながらに俺も思ったことはよく覚えている。
あの時、イタチがその2人の事を弟と妹と言っていた。
あの時の事件では、多量出血により少女が昏睡状態に陥り、目を覚ますまでに相当な時間がかかったらしい…と言うことは、後の報告で聞いている。
( なるほどね、その時の子達が、サスケとソラって事か。
そりゃ、サスケにとっちゃ"リク"がサスケを庇って気を失ってあーなったって事は、トラウマって訳だ。)
確かにその少女が昏睡状態に陥った原因は、少年を守るためだったとか。
今思い出したことだが、特にオシャレ好きと言うわけでもないサスケが肌身離さず身につけているペンダントは、あの時近くに落ちていた袋をカカシが拾い、届けたものだ。
なんとなく、目を覚まさない『リク』に、サスケが異常な程離れなかった理由が分かった気がする。
なるほどねと本から目をそらすと、丁度考えていた彼が、目の前を通った。
噂をすればなんとやら、だろうか。
「ちょっとサスケ、リクはどうしたの?」
「ナルトとサクラを探している。手伝え。」
「サスケ…それ、先生に対する態度じゃないでしょーよ。」
「フン。」
「はぁ、やれやれ。」
いつもはクールぶっているのに、今日はヤケに嬉しそうなサスケ。
きっとそれも、照れ隠しだったりするんだろ?
まったく、不器用なやつだ。
カカシはマスクの下でニコリと口角を上げ、本を閉じ。
そしてよいしょと立ち上がりサスケに協力するべく屋根から降りた。
こんな平和な日、ずっと続けば良いとすら思いながら。