第36章 私は
『これが私の知る、あの日の兄さんです。
兄さんは、任務を完遂した後、1人で泣いてたんです。
……ごめんなさい、あの時私は、ただ一緒にいることしかできなくて。
それ以外、兄さんに何もしてあげられなかった。
こんな話でごめんなさい、カカシ先生。』
そう言って、涙を流すソラに何と声をかければ良いか分からなかった。
ソラは今でも、イタチの事を信じ、尊敬しているのだろう。
そして、イタチの心の痛みを感じているのだろう。
「…いーよ、ありがとう。」
味気ない返事をし、カカシは頭をひねった。
不思議に思っていた。
任務に忠実であったが、とても兄弟思いで優しかったイタチが、何故あのような事をしたのか。
ソラの話で、蟠りが少し解けた。
「辛い話をさせて悪かった。」
『いいえ、大丈夫です。これが真実か、まだハッキリしかねてますし。』
下手な作り笑いで答えるソラに、心が痛んだ。
「じゃ、これは秘密にしとくよ。そろそろ出ないとサスケも怒ってるだろうしね。
あ、その机の上のやつ、同期と、ガイの班からだから。
俺は帰るよ。また明日ね、"リク"。」
『はい、ありがとうございました。』
カカシは話し出す前に張っておいた結界を解き、部屋の外へと出て行った。
「おい、遅いぞ。」
「まあ、俺だってリクと2人で話したい事沢山あったんだよ。…お前、休めって言ったのに。」
外でサスケがカカシに文句を言っているのが聞こえる。
私は涙を拭い、できるだけ明るい声で、彼の名を呼んだ。
『サスケー!早くきてよ!』
そういうと、直ぐにサスケが入ってきたので、笑いが止まらない。
なんだサスケは、とても単純なの?
可愛い、私の愛する人。
『…フフッ!』
「なんだよ、早く来いって言ったの、リクだろ。」
『…だって、呼んでから来るまで超早かったんだもん…。フフッ』
「フン。」
『フンってなによ!照れ隠し?』
「チッ…黙ってろ。」
『フフッ!はいはい黙りますよ〜!』
イタチの話をして、重かった心が、サスケの登場により、一気に軽くなった。
冗談を言えるほどに。
やっぱり私にとって、サスケの存在はとても大きい。