第36章 私は
ソラは頭を撫でるカカシの手を掴み、それを無理矢理下ろした。
だって、まだ聞かなきゃならない事があるから。
『先生、「まずは」って言いましたよね。まだ聞きたい事あるんでしょ?』
「まったくソラは鋭いな…。これは、三代目が教えてくれなくて、俺が気になっているだけなんだが…」
ふぅとため息をついたカカシは、確認するかのような眼差しを向けた後、ゆっくりともう1つの疑問について話し始めた。
「…ソラは、イタチによるうちはの虐殺の日から里に来るまで三年空いている。
どうやって生き延びて、なぜ記憶を失ったんだ。」
一瞬、言葉が詰まった。
…その事は、イタチに誰にも言うなと釘を刺された。
本来虐殺が任務であった事を言うなと。
なら、そこを伏せれば言ってもいいだろうか。
しかし、カカシだって鋭い。
必ず元を尋ねられるに決まっている。
『…先生。五代目にも、サスケにも絶対言わないと約束してください。』
「ああ、わかった。」
(兄さんごめんね…。カカシ先生には全部言うよ。)
隠してたって、私が存在する限りいつかはバレる。
それなら一層…。
それかまた、これを隠し通す重圧に逃げたかったのかもしれない。
だから私は、あの日何があったか隠さず話すことにした。
『私はあの日、イタチ兄さんに刺されて気を失いました。
気がついた時には里の外にいました。
多分、兄さんが運んだんだと思います。』
カカシは、とても驚いた顔をしていた。
目を大きく見開いて、とてもわかりやすく。
それを見て、少しだけクスッと笑った。
『まぁ驚きますよね。一族を殺した兄さんが、サスケと私の命は守ったんですから。
そして、3年間兄さんに修行をつけてもらっていました。
修行を終えて、別れる時に、記憶を封印されました。
理由はよく分からないですけど…。』
「…何故イタチは2人だけを残したんだ。」
そう、そこはイタチも教えてくれなかった。
だから、これは愛する兄と、憎き敵の会話からの推測だけれども。
『全てが正しいかはハッキリしてませんが…。
兄さんは、"うちは側について、全滅" または "木の葉について、弟と妹だけは助ける" という二択を強いられたんです。
そして後者を取った。…任務として。』