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大切【NARUTO】

第35章 知ってる





"うちはイタチ"




まさか、こんな所で聞くとは思わなかった。

俺が全てを失う原因を作った、張本人。
あの赤い夜の首謀者。実行者。

どす黒い感情がどんどんと溢れて心を覆った。


(あいつがこの里に帰ってきただと!?
しかもナルトを追ってる!?どういうことだ!?)


この前もカカシに言われた。
復讐なんてやめとけ、と。

だから、ここにいる事だって考えていた。

けれど、あいつの名前を聞いただけでこれほどの憎悪が湧き上がってくるなんて。

自分の感情と葛藤していた時だ。
カカシの側にいたリクが嘔吐したのは。

頭を抱えて、苦しそうに唸っている姿に、俺は動くことができなかった。


(リクの記憶の…?それにしても何故、どのタイミングで蘇ろうとしてるんだ?)


この前の事を思い出し、また苦しむリクの姿にも動揺する。

イタチがすぐそばに居るのに。
今、例の発作が起きるなんて。


「…リク!おい!…クソ…っ!こんな時にっ!」


…ちょっと待てよ。
リクが苦しみだしたのは、イタチの名が出てからだ。

まさか、もしかすると。
リクが記憶を失うほどの衝撃を与えた者こそ、イタチじゃないのだろうか。

だから、奴の名前を聞いて、奴を思い出しかけて、苦しんでるんじゃないだろうか?

その推測が正しいかは分からない。
けれど、イタチなら、やりかねない。

俺から全てを奪ったように、リクの全てを奪い去る事だって、あいつなら可能なのだ。

ということは、今はイタチだ。
俺はその決断をした。

運良くここには上忍ばかりで信頼出来る奴らだ。
きっとなんとかしてくれる。


(リク…。俺を知っているお前なら…お前を置いていく事を許してくれるよな?
俺は…あいつを殺さなければならない。)


サスケはリクの頭をポンと撫で、部屋を飛び出した。


(ソラ…。必ず復讐を遂げてみせる…。みててくれ。)


後ろから何が聞こえてきたが、はっきりと聞こえたのはたった一人の声だけ。


『いかないで…サスケ…。』


リクの消えそうな声だけが、耳に残った。






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