第35章 知ってる
私はサスケの斜め後ろを歩き、彼を見つめていた。
先程の修行、やはりサスケはいつもよりも変だった。
彼の言葉に傷つくよりも、彼の心情が心配だ。
何故だろう、どうしてだろう、考えたって確かな答えが出ることはなかった。
焦るサスケに何もしてあげられない自分に腹が立ち、悔しい思いのまま何も伝える事も出来ず、気づけばもうカカシの元へ辿り着いていた。
(想いは、言わなきゃ伝わらない。言ってくれないのなら…サスケの心、読めたらいいのに。)
そんな夢の話を思い描き、ノックして部屋に入ると、ガイ、アスマ、紅の3人が部屋にいた。
そしてなんと、ベットに横たわっているのはカカシだった。
『カカシ先生…、どうしたの?』
「……上忍ばかり集まって何してる。一体何があった!?」
俯く上忍の間を割り、リクはカカシの元に近寄った。
『カカシ先生?…カカシ先生!!』
苦しそうな表情で眠っているカカシの姿を見て、たたごとじゃないと分かる。
どれだけ名を呼んでも、一切目を覚まさないのだ。
『先生に…何が?ねぇ、黙ってないで、サスケの質問に答えてよ。』
「ん…いや、別に何も…」
ガイが作り笑いで答えたが、それが嘘だとわかり、顔をしかめる。
何を隠しているのか。
それこそ、心でも読めたら楽なんだろうけど。
じっと見つめても、ガイは何も答えない。
…しかし、彼の努力は新たに入ってきた忍のせいで無駄となった。
「あのイタチが帰ってきたって話は本当か…!?しかもナルトを追ってるって…あっ!」
サスケと私を見て、自分の失言に気づいたようで、口を塞いでいる。
『……イタチ。うちは…イタチ?』
頭がズキリと痛んだ。
久方ぶりの頭痛に驚きを感じたのは一瞬で…。
(待って…どうして名字がうちはだって分かったの…?)
今までに無い程の痛み。
この前に気を失った時以上だ。
この痛みを、何と表現したらいいかもわからない。
(知ってる。イタチは…。サスケの…、私の…。)
名前を反復させるだけで、痛みはどんどんと増す。
私の記憶の鍵。
それがうちはイタチなのだろうか。
『イタチ…やめて……兄さん……!』
声は掠れ、きっと誰にも届いていないだろう。
私は激しい痛みに嘔吐し、焦点も定まらなくなっていった。