第35章 知ってる
「千鳥!!」
『指銃弾・焔!』
俺の千鳥とリクの技が相殺され、衝撃波が辺りを裂く。
今の千鳥は本気だった。
そしてそれを相殺するそど、リクは強いという事。
俺はまた、その事実と非力な自分に腹が立ち、リクに八つ当たりをしているだけ。
それに、リクがここまで強くなければ、今ので殺してしまっていた可能性もある。
…大切な、愛する人を。
(また新術か。クソ…ッ!こんなんじゃダメだ!リクよりも強くならなきゃならねぇのに。)
そう思った時、何故かナルトの背が脳裏に浮かんだ。
「畜生…!」
落ちこぼれ呼ばわりされていたアカデミーの頃から見たら、信じられないくらいの成長ぶりのナルトに苛立つ。
近くでずっと見ているとわかる。
ナルトは時に、恐怖すら感じる力を秘めているのだ。
そう、リクよりも。
あいつは一体何者なのか。
イライラを収めようと、俺は印を結ぶ。
それを見たリクが、顔面蒼白で叫んだ。
『やめて!これ以上千鳥を使えば、呪印が暴走するわ!』
「構えろ。」
その一言に、リクが傷ついた顔をする。
一瞬、我に返った。
(何やってんだよ…俺はリクのそんな顔が見たいんじゃねぇだろ。)
気づいた瞬間、呪印が痛み、思わず膝をつく。
首筋に手をやると、リクが駆け寄ってきた。
『サスケ!大丈夫!?だからやめてって言ったのに!』
心配してリクが声をかけてくれるが、聞こえないふりをする。
今俺には、リクに心配してもらう資格はない。
しかし彼女の顔を盗み見ると、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
…呪印ばかりか胸も痛んだ。
全く俺は、何をやってるんだ。
目の前の大切な人をこんなに苦しめて。
…それでも俺は、無理をしてでも、力を手に入れなければならない。
(オレはどうしたら強くなれる…?)
彼奴を殺る力を、リクを守る力を。
誰にも負けない強さを。
俺は拳を強く握りしめた。
「カカシのところに行く。」
『…分かったわ。』
リクは小さく頷き立ち上がった。
差し伸べてくれた手を無視し、俺も立ち上がる。
リクの手が彷徨う様から、俺は目をそらし続けた。