第34章 デートをしよう
…ここはどこだ?
真っ白な世界。
辺りを見回しても何もない。
『うっ…ひっく……っ。うぅ…。』
泣き声が聞こえる。
「…誰だ。」
俺の声が響く。
『なんでよ…。』
この声は、懐かしい、声。
「ソラか!何処だ!何処にいる!」
振り返って、俺は目を丸くした。
そこに居たのは、あの日のソラだった。
その隣には…。
「うちは…イタチ…!!」
今までの憎しみが爆発し、俺は奴に殴りかかった。
けれど、それは奴の体を通り抜け、当たらない。
『なんで、なんで兄さんがこんな事に…!
全部、あいつが悪いのに!』
「離れろソラ!お前はそいつに…!」
どれだけ叫んでも、ソラは離れるどころかイタチの手を握った。
「頼む!逃げてくれ!!」
そうじゃないと、お前は…。
そう思った瞬間、突然に白かった世界が紅く染まる。
そしてまたソラの身体も、あの時のように、イタチに…。
「やめろ…!やめてくれ!ソラ!」
身体を貫かれ紅に染まったソラは、この紅の世界に溶ける。
また俺は、目の前で…。
「どうして…どうして……。どうして!!」
俺の声は、どんどん憎しみを含んだ黒いものとなっていく。
そしてイタチが、こちらを向いた。
あの夜と同じ紅い目に、俺の憎しみは増幅する。
「殺してやる、イタチ!たとえ闇に身を染めようとも!どんな手を使っても!」
その時だった。
(ダメよサスケ!闇に飲まれちゃダメ!)
心に声が響く。
それと同時に…リクの姿が脳裏に浮かんだ。
必死に手を伸ばす、彼女の姿が。
「悪い…リク………俺は…。」
目の前に殺したい奴がいる。
俺は暗闇に足を踏み入れた。
憎しみが俺を突き動かすのだ。
(だめよ…!!だめ!行かないでサスケ!!)
ふと、声に導かれたかのように俺は振り返る。
そしてやっと気づいたのだ。
俺を呼ぶ声こそ、リクの声だったと。
(…ありがとうリク。お前のおかげで、俺は…。)
絶望しきった黒い世界を鮮やかに彩ってくれたのは、紛れもなく、お前だ。
俺がその事に気づいた瞬間、踏み入れたはずの暗闇は、一瞬にして美しい空色に染まった。