第34章 デートをしよう
…ここはどこ?
真っ白な世界。
辺りを見回しても何もない。
「うっ…ひっく……っ。うぅ…。」
泣き声が聞こえる。
『…誰?』
私の声が響く。
「うっ…父さん、母さん…ソラ…。」
少しだけ高いけれど、いつもの聴きなれた声。
『もしかしてサスケ?こんなところで何を…?』
振り返って、私は目を丸くした。
いつもと違う、幼い頃のサスケがそこにいた。
「どうして…?」
『どうしてって何が…。大丈夫…?』
一向に泣き止むことのないサスケに触れようと手を伸ばす。
しかしその手はサスケの体を通り過ぎ、触れることができない。
(えっ…これは夢?けれど、けれど…夢にしては、なんてリアルなのだろう…?)
そう思った瞬間、突然に白かった世界が紅く染まる。
そしてまた、私の手も。
『な、なんなの?手が…っ!勝手に…!!』
紅に染まった自分自身の手は、自らの首を絞めつける。
息が苦しい。
「どうして…どうして……。どうして!!」
どうしてと言い続けるサスケの声は、どんどんと憎しみを含んだ黒いものとなっていく。
(ダメよサスケ!闇に飲まれちゃダメ!)
そう叫びたいのに、一層私の手は首を絞める。
「殺し…やる……タ…!た…え、闇に…を染めよ……とも!!ど…手…使って……!」
重要な部分だけ、ノイズがかかって聞こえない。
一体何をいってるのかと、耳を傾けようとするが、酸素が脳に回らず、頭がぼーっとする。
「悪い…リク………俺は…。」
また後ろから声がして、虚ろな目でそこを向いた。
目に映ったのは、私に背を向けて…私を置いて、歩み始める今のサスケの姿だった。
(だめよ…!!だめ!行かないでサスケ!!)
自分の首を絞める手は更にキツくなっていく。
言わなきゃ、想いは伝わらない。
なのに、声が出ないのだ。
私の声は、彼に届かない。
私の歌が、彼を変えてしまったから。
紅色に染まっていた辺り一帯は、一瞬にして暗闇に包まれた。
『お前の歌が、サスケを苦しめてる。だから、お前が死ねばいい。』
その空間に、何処からか、私の声が響いた。