第34章 デートをしよう
『じゃあね!また明日ね!』
「おう、寝坊すんなよ?」
『サスケが起こしてくれるんでしょ?』
「くくっ…そーだよな。」
『ふふっ!おやすみなさい!』
サスケの部屋から、隣の部屋へと帰る。
ウキウキ気分なのは変わらない。
けれど、少しの不安が少しだけ大きくなった。
最後に見せた、サスケの悲しそうな顔が頭から離れない。
いや、悲しそうというよりはむしろ、苦しそうのほうが合っているかもしれない。
一体何を疑い苦しんでいるのだろう。
…分からない。
すぐ隣にいるのに、一枚の、壁。
この部屋は私達の関係みたいなものなのかもしれないなんて、思ってしまうほどに、心の壁を感じた。
もしも心が読めたなら。
…そんな事、特殊能力がなければ出来っこないのだけど。
そんなことを考えてしまうほど、サスケとの間に感じた壁が苦しい。
明日の1日で、サスケの事をもっと知れたなら。
サスケの喜びも、優しさも…苦しさも、心の闇も。
全部包み込んであげることができたなら。
『サスケ、私は何がしてあげられる?
悩みがあるなら…打ち明けてほしい。
例え悩みのタネが、私のことであっても。』
…実は一つだけ、気になることがある。
木の葉崩しの日。
その時からサスケの様子が少しだけ変なのだ。
あの日、私はまた歌を歌ってしまった。
三代目が亡くなった哀しみの気持ちを紛らわすために。
それをサスケは聞いていた。
私はセイレーン。
その時その時の私の感情が、歌を聞いた人へ影響を与える。
あの時は悲しみや苦しみの感情を持って歌ったのだ、サスケのそういった記憶が呼び覚まされたとしてもおかしくない。
(私の歌は…不幸になる歌…。誰かを苦しめる歌…。)
中忍試験中、大蛇丸から逃げるために、止むを得ず一度歌ってしまったからといって、二度目が許される訳がない。
「約束を守らないやつはクズ呼ばわりされる。…けどな、仲間を大切にしないやつはそれ以上のクズだ。」
演習の日のカカシの言葉を思い出し、握った拳を壁に叩きつける。
カカシはこんな約束を守れなかった私をどう思うだろうか。
一度目の歌と、二度目の歌は、価値が違う。
今の私はただ、カカシとの約束を破ったクズだ。