第33章 火の意志
歌いながらボーッとしていたから、サスケが帰ってきた事にすら気付かなかった。
これで忍者と言うのだから、情けない。
サスケの方を振り返ると、サスケの頬には涙が伝っていた。
無意識のうちに口ずさんでいた私の歌が、知らないうちにサスケにすら影響していたのだろう。
何かトラウマを思い出させてしまっただろうか。
それは、悪い事をした。
『…あ……おかえり、サスケ…。泣いてる…大丈夫…?』
「……!!」
私の顔をみたまま固まってしまったサスケから、暫く目をそらさずにいると、突然にサスケが私を抱き寄せた。
『………サスケ?』
「辛かったら泣けばいい。俺がいる。」
『…………。』
「何時もは泣き虫の癖に。我慢すんなよ。」
『…………。』
「リク、俺はここにいる。」
サスケは、ここにいる。
やっと…やっと、空っぽの心でも、サスケの言いたい事が分かった。
サスケは私が大切な人を失って、心が空になっている事に気付いてくれた。
そして、一人じゃない事、側にいるから安心していいと、言ってくれてるんだ。
心が崩れそうになれば、支えてくれると言ってくれてるんだ。
それが分かった瞬間、私は堪えていた涙が頬を伝った。
そしてゆっくり、腕をサスケの背に回す。
『帰ってきてくれて…ありがとう…。
1人は辛かった。苦しかった…。』
苦しくて苦しくて、思い切り泣き叫ぶ事ができれば楽なのだろうに、それすら出来ない。
声を殺しなく私の背中を、落ち着くまでずっとサスケは撫でてくれた。