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大切【NARUTO】

第33章 火の意志





我愛羅との戦いを終え、里に戻ってきたサスケは、自宅に急いでいた。

ナルトやサクラは命に別状は無い。
そこで彼らの事をカカシの忍犬であるパックンに任せ、里に戻り、応援を呼びに来た。



そこで聞いた、三代目の死。



リクは強い。
だからきっと、この戦争の中でも生き延びているはずだ。

だけど、心はどうだろうか。
記憶を失っているという、不安定な精神状態の上、三代目の死という訃報。

三代目が、里の外で倒れていたリクを助けたらしい。
だから、リクにとって三代目は誰よりも恩がある大切な人だ。

大切な人を失う辛さ、俺は十分すぎるほど理解できる。


「サスケ、リクを頼んだぞ。」


リクがこの里に来た時、三代目に言われた言葉を思い出し、俺はさらに足を早めた。


(今、側にいてやれなきゃだめだ。)


辛い時、苦しい時、誰もいない事がどれだけの絶望か。

壊れた里に胸を痛めながら、やっとの思いでたどり着いた俺たちの家は、大通りから少し逸れた場所にあった為か被害は少ない。

なら彼女はきっと、ここに居る。






ゆっくりと扉を開く。
真っ暗な部屋の中、微かに感じる彼女の気配。

静かに中に入ると、リクは重たく暗い空を窓から眺めていた。
そして、小さな声で歌を歌っていた。


『……大切なモノ、護りたくて、強くなって。
それでも無くしてしまう、儚いモノ。
もう、還ってこないあの日の声…』


顔が見えなくても、リクの歌声は震えていて、涙を堪えている事が分かる。

そしてまた、俺の悲しい記憶すら呼び覚ます歌声に、気がつけば俺も涙を流していた。

一瞬、あの日の惨劇が過ったからだ。


『…あ……おかえり、サスケ…。泣いてる…大丈夫…?』


「……!!」


俺の気配に気づき、振り返ったリクは、涙を流す事なく、儚げに笑っていた。

今にも彼女の心が崩れそうなのが、すぐに分かった。

俺は、目の前から消えててしまいそうなリクを、知らずのうちに抱き寄せていた。



目の前から

消えてしまわないように





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