第32章 日向
サスケの試合を観る前に、飲み物を買おうと自販機を探す。
(…トマトジュース。サスケに買っといてやるか!私って超優しい!)
自画自賛をしたのち、自分用のココアとサスケのジュースを買い、自販機の隣に腰を下ろした。
場内からは歓声が聞こえる。
きっとサスケが体術で、みんなの度肝を抜いている頃だろう。
(…良いな。私だって、はやく強い人と戦いたい。)
ポーチに入れていたトーナメント表を取り出し、眺める。
もともと合格者は10人、私は第5試合の予定だった。
人数の関係上、はじめから一試合みんなより少なかった。
なのに、さらに貴重な一試合を相手の棄権により不戦勝。
『…最悪。ほんと、ついてないな。』
私の試験への参加理由はサスケと同じ。
強い人と戦う事。
なのに誰ともまだ戦えていない。
グシャっと紙を握った後、それとサスケのジュースをポーチにしまう。
そうだ、どうせ観戦するなら、ヒナタの所に行こう。
きっとヒナタなら誰よりも分かりやすく、そして詳しくナルトの感想を言ってくれるだろう。
彼女がナルトの試合をみのがすわけないから。
ヒナタの分のジュースも買い、ポーチに詰め、また会場へ戻った。
すると砂の球体が一つ、そして壁に立ち、手にチャクラを貯めているサスケの姿。
チッチッチッと音が鳴る。
まさしくその技は、千鳥だ。
『…本番でも、ちゃんとできてるじゃん。』
サスケの雷遁チャクラを使った全力の突き。
それは見事、絶対防御と呼ばれる我愛羅の殻を破った。
最高の出来に、思わずリクもニヤリと口角を上げた。
刹那。
ゾワゾワと恐怖を覚える気配。
それはまさしく、あの砂の球体の中から発せられた気配だ。
『………サスケ…!』
彼が危ない。
本能でそう思った。
殻から抜いたサスケの腕と同時に何やら悍ましい手が見える。
反射的にチャクラを練り、様子を伺う。
けれど、それは殻が崩れたと同時に消え去り、気配の質も元に戻る。
(…なんなの、さっきの気配……。)
驚きを隠せず、我愛羅の姿を見ていると…
鳥の羽のようなものが、フワリと降ってきた。