第32章 日向
「ん?どこ行くのよ、リク。サスケの試合は観ないの?」
『はい。だって、あれのお披露目会でしょ?
見なくてもいいです、それにサスケなら大丈夫だもの。
ジュースでも買ってきます。』
観客席に来るなりすぐ、リクは席を外した。
よほど自分の試合がないことが悔しかったのだろうか…。
まあ確かに、予選からずっとサスケの前で試合したいだろうに、一度も戦えてないもんな、リクは。
けれど、前までの彼女ならば、否が応でもサスケの試合を見ると言っていただろうに。
悔しいという気持ちに加えて
" サスケは強い、大丈夫 "
という信頼のようなものを、この修行中に得たようだった。
それにあの我愛羅との試合を "アレ" …つまり "千鳥" お披露目会だなんて…。
サスケへの力の絶対的信頼を覚えた分、冗談かます余裕がで来たのだろうか。
それとも自分が強くなったから、サスケを守れる自信がついたのだろうか。
いや、両者だろう。
「まったく…成長したね、リクも。」
「カカシ先生ー!どうしてリクちゃんはどっかいっちまったんだ?」
「うーん、悔しいんじゃない?サスケの方が注目されてるしネ。」
まあ、本来の記憶がある状態ならば、一番の注目は彼女だったんだろうけど。
ナルトに適当に返しながらそんなことを考える。
「でもリクが、サスケくんの試合を見ないなんてある?」
「サスケは強いって分かってるから安心してるんだろ。
まあ、この一ヶ月の修行期間を終えた中で、一番強いのは確実にリクけどネ。」
「俺だって強くなったってばよ!リクちゃんにだって、サスケにだって負けねぇ!」
「それはどうかなぁ。まあ、黙ってサスケを見とけ。サスケの3倍、リクは強いから。」
この修行期間、写輪眼と千鳥を使うサスケに、セイレーンの力も写輪眼も使わず互角…いや、それ以上の力でサスケと修行し、組手をしていた彼女だ。
3倍強いというのも嘘ではない。
そう言うとサクラとナルトは息を飲む。
そして今まさに戦いが始まろうとしている会場を見下ろした。
(ホント、うちは一族ってのは天才だよネ。サスケも、リクも。)
教え子たちの成長の速さに、カカシは少しの危機感を覚えた。