第31章 中忍試験・力
『サスケさ!予選の時なんて言おうとしてたの?』
組手をしながら、リクが問う。
ああ、そういいえば、中忍試験が終わったあとの話をしようとして、カカシに邪魔されたんだっけな。
「…なんだと思う?」
分かるわけないだろうに、俺はリクに問うてみた。
すると案の定、ムスッとした顔でリクは口を開いた。
『そんなの分かんないよ!サスケのアホー!思ってる事は口にしなきゃ伝わんないんだからね!?』
「は?アホでバカなのはリクだろうが。」
『そこが重要なんじゃないってば!アホーって所じゃなくて、言わなきゃ分かんないってとこが重要なの!!』
半ギレのリクの渾身の一撃を鳩尾にくらい、蹌踉めく。
「…ってぇな。」
『ボサッとしてるからよ!私はまあまあ強いんだからね!』
女が怒ると怖いというのはどうやら本当らしい。
…母さんが怒った所は、あんまり見た事なかったけれど。
でも、こうやって組手をしていて、手加減など一切しないリクには感謝している。
下手に手を抜かれるとこちらも手を出しづらいし、変に気を使うし。
大きくため息をついて、先ほどくらった鳩尾に手を遣りながら、その場に座り込んだ。
「怪力女かお前は…。」
『…っはぁ!?もう怒った!サスケのバカ!』
「ククッ…悪い悪い。休憩だ。」
あまりにも反応が面白かったから、少々いじりすぎた。
隣に座ったリクの手に、自分のソレを重ねると、顰めっ面を少しだけ緩め、そっぽを向く。
(ほんとお前、おもしれぇな。)
先ほどまでぎゃーぎゃーと怒っていたのに、今は無言で目を逸らしてやがる。
その様子を見た後、俺は目を閉じて空を仰いだ。
表情がクルクルと変わり、一緒にいてとても楽しい人。
それに、何時だって優しくて温かい。
最も信頼できる人。
…俺はそんなお前に、隣にいて欲しいと思うんだ。