第31章 中忍試験・力
全く同じような動きで組手をする二人を、カカシは眺めていた。
(リクのやつ…。写輪眼でコピーしたね?あれ。)
まるでリーと同じ動きをする彼女を見て、溜息をついた。
賢い彼女だから、サスケの前では使ってはないだろうが、写輪眼を使わないで欲しいのは、サスケの為だけではない。
彼女自身を守る為でもあったのに。
まさか、大蛇丸の前で力を存分に発揮してしまうとは。
サスケの呪印を封印してすぐ、その部屋に大蛇丸が現れた。
「クク…歌神リクちゃんだったかしら。
私はサスケくんだけじゃなくて、あの子も欲しいのよ。
…いいえ、うちはソラちゃんだったわね。
てっきり死んだと思ってたわ?」
「何を言っている。」
「とぼけたって無駄よ、カカシ。
あの子はイタチと同じ、あの万華鏡写輪眼を既に開眼している…。
そしてあのセイレーン特有の銀髪。
どうせならあの子に唾をつけとけば良かったかしらねぇ。」
ニヤリと笑いながら大蛇丸は話す。
どうやらリクの正体を、うちはソラだと確信を持った様子だった。
全く、厄介な事になった。
その時は結局大蛇丸はその場を去ったが、リクの正体がばれた事はかなり痛い。
ただでさえ、セイレーンは狙われる身だ。
それに加えて、うちはの血族。
里でも暗部から彼女を守る為、三代目が苦労しているのに。
大蛇丸にも眼をつけられるなんて。
カカシも第七班で一番気を使っているのはリクだ。
セイレーンの力をもつ彼女は、皆を癒す天使にも、皆を殺す兵器にもなるのだから。
彼女に悟られないよう、遠回しに歌や写輪眼を使わせないようフォローをしていたつもりだったんだが。
(俺の指導が甘かったって事かな。
…まったく、うちは揃って、変な奴らばかりに目をつけられちゃって…。)
今更ながら、うちの班は何かと凄いメンツだ。
サクラも中々偉いところにぶっ込まれたものだなと思う。
三代目は何故俺に…
こんなに沢山の特殊例を引き受けさせたのだろうか。
とりあえずは、大蛇丸からこいつらを守ってやらなきゃならない。
俺は、こいつらの担当上忍だから。
だんだんと慣れてきた様子の二人の組手から目を逸らし、大きく溜息をついた。