第31章 中忍試験・力
サスケに手を重ねられ、私はそっぽを向く。
(…なによもう、そんなことして機嫌とろうなんて思っても、引っかからないわ?)
心の中ではそう思っていても、顔に熱が集まりはじめる。
サスケが隣で笑いをこらえているのが分かる。
からかっているのか?
なんて人、あんまりだ。
そう悪態をつきながらも、先ほどの自分自身の発言を思い出す。
" 言わなきゃ想いは伝わらない。"
他人には説教する癖に、自分もそれができてない。
あまりにも自分勝手な言い草だったと反省した。
(…そうよね、私だって言わなきゃいけないのに。)
先ほどの事を謝ろうと、サスケの方を振り返る。
すると彼は空を仰いでいた。
穏やかな表情で目を閉じている彼からは、あの森で感じた憎しみの感情は感じない。
何を考えてるのだろう。
今は亡き貴方の家族の事?一族の事?
…あの子の事?
(だめよ、考えないって決めたじゃない。サスケにとってソラは、変えられない大切な人。)
フルフルと首を振り、目線を落とす。
その先にはやはり、いつものように彼の首にあるペンダント。
意識しているつもりはないのに、なぜかそれだけを捉えてしまう私の目は本当に…よくできてると思う。
小さく溜息をつくと、重ねられていた手を突然にサスケが握った。
「中忍試験が終わったら…次の休み、どこか出掛けるぞ。」
『……え?』
今、なんて言った?
あの修行の虫なサスケが…出掛ける?
「あの時言おうとしてた事だ。
俺は…お前をもっと知りたい。」
その言葉で、ブワッと全身が熱くなる。
先程までの暗い気持ちは何処へやら、嬉しいという気持ちが沢山溢れてきた。
『うん…いこう。楽しみだね!』
彼は魔法使いか何かだろうか。
私の気持ちをこうも簡単に変えてしまう。
その魔法に単純に引っかかる私も、相当のバカ野郎だとは思うけれど。
「君達、いつまで休憩するの?今日はもう限界?」
「そんなわけない。」
カカシの声で私たちは立ち上がる。
もう一度気合いを入れ直し、リクはニヤリと笑った。
『頑張ろうサスケ、強くなろう!』
「フン…当たり前だ。」
そしてまたこの空間に、サスケとリクの声が響いた。
修行はまだ始まったばかり。