第31章 中忍試験・力
チッチッチという音とともに、カカシは岩に術を当てる。
その破壊力に私とサスケは目を丸くした。
千鳥、または雷切という技らしい。
波の国で、私の体を貫通したあの技だ。
あの時は痛かったな、なんて事を思い出し、消えない傷跡となった腹部になんとなく手をやった。
サスケはあの時仮死状態であったから、この術を見るのは初めてだと思う。
なんだか嬉しそうに口角をあげていた。
カカシは、写輪眼と併用しなければ使えないこの技を、対我愛羅の為にサスケに教えるんだという。
勿論私だって教えてもらおうと思っていたのだけれど…。
「この術はリクにはまだ教えられないなぁ。」
『……ですよね。』
先ほども言ったけど、この術は写輪眼と併用して使う技。
リクも写輪眼は持っているが、それはサスケにも秘密の事だ。
これもまた波の国から帰る時の話。
「リク、これからできるだけ写輪眼は使うなよ。」
『え…どうしてですか?』
「その眼を見れば、うちは一族かどうか怪しまれるだろ?
それに、サスケに見せたら、あいつはリクを疑う。
…リクだって、サスケの一族に何があったかは、さすがにもう知ってるでしょ?」
『………。』
サスケの事を思うなら、彼の前でそれを使うなと言われたのだ。
試験中も、何度か写輪眼は使ってるけど、出来るだけ皆に見えないように気を配って動いていた。
だからサスケが隣にいる以上、残念ながら千鳥はお預けだ。
「とりあえずこの術を覚えるに当たって身体能力をあげなきゃならない。
そうだな…リー君を想像してくれれば良い。」
彼の体術のスピード、そして技の威力。
あれに近づく事が千鳥をマスターする為にも必要だという。
リクもサスケも、彼の技を写輪眼によってコピーしている為、目の前に見本がなくても脳内で再現する事は可能だ。
問題は体がついていくかどうか。
「それができるまで、術の印は教えられない。
二人で組手、出来るよね?」
カカシの投げかけに、私たちはニヤリと笑う。
そしてすぐさま距離を置き、いつもの修行の様に構えた。
『今日も負けないわよ?サスケ!』
「フン…どうだかな。」
私達は同時に地を蹴り、拳と拳をぶつけ合わせた。