第31章 中忍試験・力
『どんなに苦しい事でも、一族って括りはやはり大きなものです。
一人一人が使命を持っていて、一族を守っていく。』
「………。」
『日向一族に何があるかなんて、私にはわかりません。
一族間で嬉しい事、楽しい事もあれば、辛いこと、憎い事もあるかもしれない。
だけど繋がりは、欲しくても得られない人だっているんです。
だから、大切にしてください。』
なんでこんなにもペラペラと話してしまうのだろうか。
偉そうに話してしまった事に気付いて、頭を掻き、誤魔化して笑った。
ヒナタの悩みを、日向一族の事を何度か聞いた事がある。
だからヒナタがネジに死の間際まで追いこまれた話を聞いた時、ピンときた。
きっと、そうなってしまったのは
ヒナタもネジも悪くない。
勝手に彼らの運命を決めようとする一族だと。
だからって従兄弟同士の繋がりを、宗家と分家という苦しいものに置き換えるのはおかしい。
でも…互いにすれ違う事も全て含めて、繋がりがある中で生きていける事は羨ましい。
ゆびきりの繋がりじゃなくて、血の繋がりが。
「…生まれた時から、運命は決まっている。
落ちこぼれは落ちこぼれ、力の差だって決まってる。」
ネジは全てを悟ったかのような声でそう呟く。
俺の運命は、想いは変わらないと言っている気がした。
もうこれは、日向一族の歴史による一種の洗脳のようなものな気がする。
ネジに何があったかなんて知らない。
けど、そんな彼に私が一番言いたい事がある。
『…確かに、決められた運命はあります。
例えば、人は必ず死ぬ。
けど、その運命に従って毎日ボーッと生きるだけじゃなくて、より良い結果へ向かうための努力はします。
だから、頑張っている人達の事は見下しちゃダメです。』
例えば、自分を必死に変えようとしているヒナタ。
どれだけ馬鹿にされても、自分の価値を信じ続けたナルト。
例え、ネジが人より抜けたスキルを持っていたとしても。
彼らをそういう運命だとかって決めつける事は許されない。
『…なんかすみません。ベラベラと偉そうに。
言いたかった事は終わりです。何も思うところがなければ、今の話忘れてください。
…血族の繋がりは得がたいものです。大切にしてください。
じゃあ、本戦で会いましょう!』
何か言いたげなネジに手を振り、サスケの元へと走り出した。