第31章 中忍試験・力
目を覚ますと、そこは病院だった。
(そういえば、カカシに呪印を封印されて…。)
気を失う前の事を思い出す。
外は暗い。
予選はもう既に終わっただろう。
班員たちの結果はどうだったのだろうか。
手が誰かに握られている事に気がついてそこに目をやると、今ちょうど考えていた班員の1人、リクがいた。
彼女の腕には点滴が繋がれている。
ベットはすぐ隣にあるのに、俺の手を握って座りながら寝ていた。
本を読んでいたのか、途中のページで開きっぱなしだ。
「…たく、風邪ひくぞ。」
身体を起こし、近くにあった毛布をかけてやる。
そして握られた手とは反対側で、頭をゆっくり撫でた。
ふと、リクの読んでいたであろう本に目をやる。
それは呪印に関するもので、一から十まで説明が載っているような本だった。
そこに1ページ目から今開いているページまで、チェックや書き込みが何箇所にもわたって付けられていた。
俺の呪印をなんとかしようと試みた結果だという事は一目瞭然だ。
そして、まだまだ足元に積まれた本と巻物。
その殆どが呪印、医療に関するもの。
その中に何冊か高等忍術に関するものも混じっていた。
そのうちの一冊を、何となく手に取ってみる。
中を開いてみるが、今のサスケでは到底理解のし難い文がヅラヅラと並んでいる。
かろうじて理解できるものは、高等忍術に関する本だけ。
どう考えても、下忍が読むような書物ではない事は明らかだった。
「フッ…こんなもん読んでんのかよ。道理で筆記に強い訳だ。」
一次試験の際には彼女に助けられた。
そんな彼女の知識は、こうやって地道にコツコツと読み続けてきた本のお陰なのだろう。
そしてリクには、膨大な知識を戦闘にも応用できる頭、力と技能、行動力もある。
体力には随分と差があるはずなのに、勝ちきれない理由は、此処にあったと再確認させられた。
「本当にお前、最高だよな。」
サスケはクツクツと笑い、日が昇るまで本と顔を合わせていた。