第31章 中忍試験・力
『…まさか、一番だなんて。』
試合の為に下に残ったサスケを、私達は上の階から眺めていた。
「だいじょーぶ。なんかあったら俺が止めに入るから。」
いつのまにか隣に現れたカカシに一瞬驚く。
『先生、サスケの呪印…。』
「ああ、知ってる。」
やはりかと、俯く。
あの大蛇丸とかいうやつ、相当やばかった。
強いし、サスケにあんな物を付けて…。
今この会場の中にも、大蛇丸の気配を感じる。
(サスケを奪うのは、絶対に許さない。)
どこからかサスケを狙っているのか必死で探った。
「リク、顔怖いわよ…。」
「だいじょーぶだって!リクちゃんだって、サスケの強さは知ってんだろ?」
サスケを心配して顔をしかめていると勘違いしたらしく、ナルトとサクラが話しかけてくれる。
『う、うん。大丈夫、ありがとう。』
ここに大蛇丸がいるなんて言えば、大騒ぎになるだろう。
だから今は黙っておく事が一番だ。
そんな結論に至り、気配を探るのをやめて息を吐く。
そうして複雑な気持ちを胸に抱えたまま、サスケの試合が始まった。
サスケはいつも通りの動きができていないし、相手のヨロイとかいう男はチャクラを吸収するらしく、サスケは苦戦を強いられた。
元々二次試験終了直後でチャクラが少ないことに加え、少しでもチャクラを練ると呪印が反応するのだから、見る方も苦しくてたまらない。
そしてやはり、チャクラの枯渇と共に、首の呪印が広がり始める。
それを見たカカシが既に止めに行こうと身体を乗り出した。
(…サスケはこんな事で絶対負けない!)
劣勢のサスケを見て、リクは祈る。
しかし、絶対に目は逸らさない。
貴方の意志は、そんなモノに乗っ取られるほど弱くないでしょう?
『頑張れサスケ!』
今はあなたを側で守る事はできない。
私は見守る事しかできない、信じるしかできない。
あなたは強いはずだから。
だから見せて。
貴方の意志を、決意を、力を。
今までの、私達の修行の成果を。
サスケの心を。