第30章 中忍試験・絆
俺を抱きしめたまま、大声を出して泣くリクの頭にポンと手を乗せる。
「君は強い…。サスケくん、今の君には僕達では到底倒せない。」
リクを抱きとめたまま、ドスを睨む。
すると手打ち料として、"地の書"を俺たちに託し、音の三人衆は立ち去った。
「俺は一体…」
『全部、ただの悪夢だから…。』
質問に答えながらも、更にきつく抱きしめるリクは、まだ泣いているようだった。
「悪かった…。」
リクの頭に乗せていた手を、背に移動させ、撫でてやる。
そこで、重大な事に気づいてしまった。
「リク…離れてくれ。」
『う、うん…。気を悪くさせたかな…。ごめんなさい。』
「い、いや、そういう訳じゃなくてだな…。」
『……?』
リクが覗き込むように、俺の顔を見る。
上目遣いだし、涙で潤んだ眼と、それから火照った頬。
どれも俺の心臓を早めるには十分すぎるのだが。
それよりもなによりも、服が破られていて、ケープを巻いてるだけなのだ、こいつ。
「い、色々、当たっ…て、困る。」
『色々…?っていうかサスケ、顔赤いよ。まだ熱あるんじゃ…?』
そう言って更に彼女は俺の額に手を当てる。
…本当にこいつ、分かってない。
色々と恥ずかしすぎて、顔に熱が集まり爆発寸前で、救いの声が聞こえてきた。
「サスケくん!リク!大丈夫!?」
『どうしようサクラちゃん…、サスケがまだ熱を…!』
「ち、ちが…!」
慌てて少し取り乱したが、サクラのおかげでリクが離れてくれた。
ホッと安心するのと同時に、少しだけ残念だと思ったことは、これから先何があっても言わないだろう。