第30章 中忍試験・絆
呪印が消せなくて、何の力もないと思った。
けれど、少しだけ、変化はあったようだ。
…少しでも苦しみを緩和出来るなら。
それから、サクラも相当疲れてるだろうから、休ませてあげたい。
三人が安心して眠れますように。
気を休められるように。
そう気持ちを込めて、子守唄を歌った。
「…なんか、リクの歌って、安心するね。」
そう言ってくれたサクラは、今にも瞼を閉じようとしている。
『私が見張りをしておくから…。おやすみなさい、サクラちゃん。』
私の言葉を聞いて、安心したのか、答えることもせずにサクラは寝息を立て始めた。
(…安心して寝てて。大丈夫だよ、ゆっくり休んでね。)
子守唄の続きを歌いながら、ナルトとサスケの額のタオルを替えてやる。
座って眠ったサクラも横にして、羽織っていたケープを掛けた。
外を眺めると、もう真っ暗で。
これから休むものもいるだろが、それをチャンスに襲ってくる者達もいるかもしれない。
見張りは最重要任務だ。
(…今は私が、みんなを守らなきゃ。)
決意を胸に外を見ていると、やはりズキズキと腕が痛む。
その原因は、やはり白いあざ。
先ほど確認した時と大きさの変化はない。
…波のようにやってくる痛みも変わらず、治まる気配がしない。
大蛇丸や再不斬と戦ったときはアザが広がった。
けど今の子守り唄はそんなことはない。
その差はなんなのか。
『…どちらにしろこの力、ほとんど使ったことなかったけど、不便ね。』
…波の国ではあの時はそれどころではなかった。
それに、波の国を発つ時にはもう、消えていたのだ。
(そのうち、消えるよね…。)
いっときの力の効力は絶大。
けれど代償は、痛いし熱を帯びてるし、見た目も悪いし、とにかく酷い。
腕以外にも腹や足など、隠れはしているものの、何箇所かにアザが広がっているのも発見した。
身体のいたるところにできた白いアザをみて、リクは大きくため息をついたのだった。