第29章 中忍試験・死の森
(グッ…。金縛か、体が動かない!)
奴と目が合い、体の自由が奪われる。
「やっぱり兄弟だわね…。あのイタチ以上の能力を秘めた目をしている。」
"イタチ"という言葉が、突然に奴から出てきて驚く。
そしてまた、心の奥にあった憎悪がみるみるうちに溢れかえった。
「お前は一体何者だ!?」
きっと睨むと、奴は笑う。
その時だ。
隣から、歌が聞こえる。
ヴォカリーズ…歌詞のない歌を口ずさむのは…。
「おい、リク何歌って……!?」
場違いの歌に驚き、止めようと手を伸ばす。
手を、伸ばす。
…動けてる。
「え、どういうことなの!?」
その声に振り返ると、サクラも同様動けるようになっていた。
こんな簡単に金縛は解けるようなものではないはずなのに。
リクが歌い出した瞬間に、金縛が解けた。
訳が分からないと、もう一度彼女を見て、言葉を失った。
だんだんと、銀に染まる髪。
見間違えか、何かの幻術かと目を擦るが、それはまぎれもない現実で。
その銀髪を揺らし、歌う姿はまるで、大好きだった幼馴染の母親の姿だった。
「ハル…さん?」
「サスケくん、ハルさんって…誰?」
サクラの問いにも答えることができないほどに驚愕していた。
「貴女まさか…いや、そんな筈は…。」
奴でさえ、驚きを隠せずにいる。
そんな中、歌を止めたリクは1人、奴に向かって走り出した。